最愛ベイベ <後>


ゾロが出したゾロが出したゾロが出すとこ見ちゃった。
腹にネットリ濡れた感触を受けて、サンジは驚き、目を見開いた。
盛大にぶちまけられた白い液は大量で、強い粘着力をもって、サンジを汚していた。
顔を上げれば、ゾロが肩で息をしながら、悔しそうに俯いて。
彼の指はまだサンジの中に入ったままなのだけれど、お互いそれどころではない。
何しろ、サンジは初めてだったのだ。
ゾロが、その、イクところを見たのは。
ハァハァと、獣のように息を継ぎながら俯いたゾロの耳が、真っ赤で。
きっと、恥ずかしくて情けなくて、居た堪れないに違いない。
けれどもサンジは、それが嬉しくて仕方なかった。
あの、ゾロが。
追い駆けても追い駆けても追いつけないと思っていた、ゾロが。
何だか何だか、ものすごく、カワイイ!
抱き締めてチューして、髪の毛をわしゃわしゃしてやりたいほど、カワイイ!

「…悪ィ…」

絞り出されたその声も、バツが悪そうに小さくて。
何て可愛いのかと、サンジは感極まった。

「…ッゾロォ!」

感極まったまま、ゾロの頭を胸に抱え込んだ。

「ウワ!」

倒れこんできたゾロが生意気にも暴れようとしたので、サンジは逃がすまいと腕に力を込める。

「お、おい!離せ!」

「なんでっ?ゾロ、こんなにカワイイのに!」

「可愛くねェ! つーか、顔に付くんだよ!コレが!」

「ナニが?」

覗き込んでみれば、ゾロの下唇と顎に、ネットリと。
自業自得とは言え、セルフ顔射状態は、ちょっと気の毒だ。
しかしサンジは、その姿を見て、ありえないほど興奮してしまった。
だって、あのゾロが!顔にベッタリ精液を!
サンジの思考は健康的にエロ方向へと突き進み、下半身が再びムズムズと疼き出す。
気分が昂まれば、未だゴツい指に犯されたままの後ろにも意識がいって、半端なまま放り出されたペニスも、早く快感を寄越せとサンジに抗議してきた。

「ン、ゾロォ…」

反省してる暇があったら、自分にかまえ、と。
サンジはゾロをカニバサミして、ゾロの頬に付いた青臭い精液舐め取り、続きをねだった。
幼い頃から、誰も逆らうことなど出来なかった、サンジ最強の武器である上目遣いで誘惑すれば、敵はいとも簡単に篭絡だ。

「この、エロ小僧」

悪態を吐きながらも、ゾロは鼻息も荒く失敗から立ち直り、サンジにちゅ、とキスしてくれた。
腹に当たったゾロの股間は、元気なことにすっかり力を盛り返していて、それがゾロ本来の精力ゆえなのか、それともそれほどまでに激しくサンジに欲情してくれているからなのか、判断が付きかねたけれども、サンジにはどちらでもよかった。
だって、この行為は、セックスなんだから。
何が何でも体を繋がなくちゃ意味がない、と思っているわけではないが、やっぱりサンジは、ゾロと繋がりたかったから。
ゾロの逞しいペニスで貫かれる時、自分がどうなってしまうのか、サンジは知りたかった。
受け入れる覚悟はとうの昔から出来ていて、あとは実行あるのみ、なのだ。伊達に長い間イメージトレーニングしていたわけではない。
だからゾロに萎えられては困るのだ。
痛いかなとか、苦しいだろうなとか、ネガティブな想像はさっぱり捨てて、ゾロと繋がることだけを期待する。
きっと自分は拡げられる痛みに耐えて、心配するゾロに幸せそうに微笑んでやるのだ。それでこそ正しい初夜の貫通式ではないか。
今は夜でもないし、初夜でもなければサンジが新妻なのでもない。
しかしサンジのセルフイメージは無限大に膨らみ、美しいロストバージンを夢見ていた。
そう考えれば、解しにかかっているこの指も、何だか神聖なものにすら思えてくる。
なのに中指は中々にイヤラしい動きを見せて、初夜らしからぬ喘ぎをサンジに上げさせた。

「ン!アア、アッ!」

「気持ちいいか?」

「へ、へんな感じ…!」

「ココは?」

「ヒャ!」

どこで覚えてきたんだか、巧みなゾロの指遣いに、サンジの息は激しく弾んだ。
ペニスはもうカチカチで、勢い良く臍を打ち、羞恥の欠片も示してくれない。
いつの間にか中指は人差し指とタッグを組んで、二本がかりでサンジを攻め立てる。
ペニスにも触って欲しくて腰を揺らすと、察したゾロがニヤリと笑って体をズラして。
そのままパクン、と食べられてしまった。

「う、ひゃ!」

ゾロの熱い口腔に含まれたペニスは、今まで味わったことのない快感をサンジに与え、身も世もなく、サンジは溺れた。
これはフェラチオだと意識すれば、快感は更に倍増しになってサンジを襲い、脳裏が真っ白になって、興奮がペニスの先から爆発しようとした。

「い、いく!イク!ゾロ、離し…」

本当は離されたくなんてなかったけれど。
お約束でサンジが言いかけると、ゾロは律儀にもその要求に応えやがった。

「ア!」

快感から急に放り出されたサンジは、むずがるようにゾロを見て。
目が合ったゾロは、鼻の穴がおっ開いた切羽詰った様子で、サンジに問うた。

「挿れていいか」

サンジは内心、せめてイカせてからにしてくれと思わないでもなかったが、いよいよ迫った結合の瞬間に、そんな余裕も吹っ飛んだ。

「…お、おう」

「本当にいいか」

「…いいっつってんだろ」

「後悔しねェか」

「しつっけェぞ!」

頬を赤く染めて言い放ったサンジの前髪を、ゾロは愛しそうにかき上げて。
うっとりするような低音で、サンジを口説く。

「俺のもんになるか」

その言葉は、サンジの腰を直撃して。
ゾロに愛でられるこの身を、誇らしく思った。

「…とっくに、テメェのモンだろうがよ」

よっしゃバッチコーイ!と。
サンジが色気もクソもない気合いを入れて、目を固く閉じた次の瞬間。
ガバリと足を大きく広げられ、ドクドクと凶暴に脈打つ熱いカタマリが、サンジのソコへ押し当てられる。

「へ!?」

目の前が、極彩色でスパークするような。

「へゃっ!?」

この世のものとは思えぬ、あんまりな激痛が、サンジを襲った。
これは、幸せそうに微笑んでいる場合ではない。
微笑んだ瞬間に、本物の天国へ旅立ってしまえそうだ。

「いっいっいっ」

「…イイのか?」

「い…ってェんだよ!この馬並みマリモ!」

ゾロの背中を踵で蹴り、どうにかならんかと、両腕をバタバタさせて。
けれどこればかりはどうにもならずに、サンジは脂汗に塗れた。

「…痛ェか…」

ゾロが悔しそうな声で言って、動こうともせずにサンジを抱き締めたので、ただでさえ切れ切れな呼吸が、更に苦しくなる。

「やめるか?」

「…いい、から、続けろ…!」

押し広げられてミチミチなソコが、泣きたいほど痛い。
内臓がズレるんじゃないかと思うほどに深く穿たれたゾロのペニスを心ならずも締め付けて、その大きさを体で感じる。

「今更、やめられねェだろ…!」

するとゾロは、痛いような苦しいような、妙な風に顔を顰めて。

「ああ、やめられねェ」

ギュッとサンジをもう一度きつく抱き締めてから、上体を起こして、ゆっくりと律動を始めた。

「お前のココ、堪んねェ。痛がっても、やめてやれねェ」

正直に吐露したゾロは、それでも詫びの言葉など口にせず。
そんなゾロに、サンジはいたく満足して、痛みに耐え抜く覚悟をした。
しかしそれも束の間のことで。
抜き差しされる圧迫は、動かれずにいたときの比にならず。
痛くて、苦しくて、けれどこれが満たされる幸福なのだと、サンジは涙した。

「もうちょっとだから頑張れ」

そんな可笑しな励ましに、幾分緊張を解されて、泣き笑った。
ふたりに欠けていたのは、言葉でも心の繋がりでもなくて、体の繋がりで。
それがこうして満たされていく安堵に、サンジはゾロを愛しく思う。
眉間に皺を寄せながらサンジを征服するゾロが、無性に可愛く。
快楽に浸って無防備な瞳にはサンジしか映っていなくて、きっと頭の中もサンジでいっぱいで。
サンジはゾロに犯されながら、ゾロを侵しているのだと感じた。

「サンジ…サンジ…」

漏れ出る声は、喘ぎにも似て。
この、可愛くてならない年上の幼馴染を、サンジは愛しんだ。
長い間、庇護され、可愛がられてきたのは自分だったのに。
今、ゾロは自分の中に在る。
自分が包み、愛しみ、快楽を与えている。
ゾロが小さく呻き、サンジの名を呼びながら、最奥に絶頂を叩きつけたとき。
サンジは、ゾロを自分のものにした満足感で、いっぱいだった。


                         ◆◇◆


「俺、結局イッてないんですけどー」

ぐったりと床に這ったサンジは、言葉とは裏腹に、どこか嬉しそうな顔をしていた。
あまりにもサンジの中がヨくて、途中からは自分の快感を追うことしか頭になかったゾロは、反省と今後の課題を胸に秘めて、サンジの髪に口づける。

「今度は、必ずイかせる」

「今度っつーか、今イかせろよ」

生意気な顔で言い放ったサンジに、ならばそうしてやろうと圧し掛かると、サンジは笑って、ゾロのまん丸な後頭部を撫でた。

「ウソ、冗談。今はそれどころじゃねェって」

そのまま薄い胸に抱き込まれ、甘い汗の匂いを嗅ぐ。
サンジの手が緩やかにゾロの髪に差し込まれ、イイコイイコと撫でられた。
その手は優しく、温かく。
無条件にゾロを享受する、母親のような愛しみ方で。
あの小さかった幼馴染が、知らない間にゾロを愛し、包んでくれていた。

「カワイイなぁ、ゾロ」

可愛いのはお前だと、悔しく言い返そうとしたところで、言葉はサンジの唇に吸い込まれる。

「カワイイカワイイ、俺の最愛ベイベー」

喉の奥で笑いながら、サンジはゾロの唇を蹂躙し続けた。
その舌技に、不覚にもクラクラしながら、ゾロは思う。
そろそろ、負けてやってもいいかもしれない、と。
小さな幼馴染はもう、守るものでも庇うものでもなくて。
体も心もイーブンな、唯一の恋人になったのだから。
包んで包まれて、甘やかしあって生きていけばいい。
無論、体の上では主導権を渡すつもりはないけれど。
深く唇を重ね合わせて、互いの名前を相手の喉に送り込む。
ずっと、こうして。
ずっと、これからも。
お隣のサンジくんに、ゾロはメロメロなのだろう。



「ただいまー」

玄関から懐かしい母親の声がして、ゾロは再び始められるこの街での生活に、想いを馳せた。
自分と、自分の家族と、サンジと、サンジの家族と。

「ゾロー?サンジくん来てるのー?」

幼い頃から何度となく繰り返されたその言葉に、サンジとふたり、目を合わせて笑った。

「おかえりー」

母とサンジと自分。三人で、サンジが焼いたもんじゃを食べよう。
他愛もない日常が、今日からまた、始まる。




本懐編、無事終了〜。
サンちゃん感じまくりの絶頂編も書きたいなぁ…ダメ?
んー、もんじゃ食べたい。