知りたがりベイベ(後)


「いいか、よく聞けサンジ」

ゾロにしがみ付いたままのサンジの背中を撫でながら、ゾロは切り出した。
ここで口篭るのはみっともよくない。
アレだ、性教育はいかにそれが自然なことであり、成長の証であることかを説かねばならないのだ。
説教者が照れていては、説得力に欠けるというものだ。

「チンコから出たのはな、小便じゃねェ」

「…膿か」

サンジは、ハァァ、と深海まで沈んでいきそうな溜息をついた。

「膿でもねェ。アレは、精液ってんだ」

「せーえき」

「オトコは大人になると、チンコからソレが出るようになる。出す瞬間は物凄ェ気持ちがいい。ちなみにオンナの中で出せば、ガキが出来る」

「ガキ」

「言わばアレだ、ガキの源だ。種だな」

「俺、知らないうちに出ちゃってたけど」

「そういうこともある。マス掻きを怠ってると、稀に起きる」

「マス」

「種はな、出さねェと体ン中に溜っちまうんだよ。それを定期的に自分で出さないと、寝てる間に勝手に出やがる」

「はぁ」

「オトコにとってマス掻きは、その事態を回避する手段であり、来たるべき日のために己を鍛える、自己鍛錬でもある」

「ほー」

「お前も大人になった、ってこった。めでてぇ話じゃねェか」

我ながら立派な説教だった、とゾロが満足していると、何かを納得したらしいサンジがゾロの膝の上で可笑しな顔をしていた。

「何だ、その顔」

「や、じゃあゾロもしてるわけ、その、マス掻き」

「お、まぁ…やらねェこともない」

本当は毎日毎晩しないとエライことになってしまう思春期なゾロだったが。

「な、どうやんの、ソレ」

期待に満ちた眼差しで、サンジがゾロの股間を覗き込む。
教えたからにはその方法も伝授しないわけにはいかない。
しかしオトコとして、ガキの前でマス掻きを実演するのはどうか。
もしかしなくてもそれは変態行為ではないだろうか。
逡巡した挙句、ゾロは良い方法を思いつく。

「ヨシ、教えてやる。チンコ出せ」

である。
自分が実演しなくとも、サンジに実習してもらえばいいのだ。
その方が安全確実、おまけに恥もかかないという一石三鳥。

「え、チンコ出すの、俺が?」

動揺しつつも、ちょっと嬉しそうなのは何故か。
そこがサンジのアホたる可愛さなわけで、ゾロは気にせずサンジの半ズボンを下ろすのを手伝った。
今も風呂には度々一緒に入るので、サンジの一物を見たところで特に感慨はない。
しかしじっくり見てみれば、そこには髪と同じホワホワの金毛がうっすら生えており、まだまだ子供な彼の性器を控えめに守っていた。

「おお、お前毛が生えたのか!」

「へへ、かっこいいだろ」

見せ付けるように股間を張り出したサンジの姿はアホ以外の何者でもなかったが、ゾロにはそれでこそスタンダードでニュートラルなサンジだったので、うむ、と頷いておく。

「じゃ、あっち向け」

向かい合わせにゾロの膝に座っていたサンジをひょいとひっくり返し、背中を抱える。
下半身剥き出しの金髪少年と、それを膝に抱え上げて後ろから股間に手を伸ばすマッチョな青年と。
ハタから見れば、速攻で警察を呼ばれそうな光景であった。

「いいか、これはイタズラじゃねェ。教育だ、キョーイク」

「なにブツブツ言ってんだ」

「始めるぞ、覚悟はいいか」

「え、カクゴなんて必要なのか」

不信気なサンジを余所に、ゾロはサンジのクニャクニャのチンコを握った。
見た目も触感も、どことなく明太子みたいだった。

「まず、チンコを勃たせることからだ」

「お、おう」

握りつぶさぬよう、優しく。
親指の腹と人差し指で、ゆっくりと扱く。

「ん…あ?」

「どうした」

「何だコレ、んー、変な感じ」

「気持ちイイって感じじゃねェのか」

「そ…かも」

くにゅくにゅくにゅ。
次第に熱と質量を持ち始めたソコは、始めて30秒も経たぬ内に天を指した。

「おー、チンコ上向いてるよ、何で?」

「これが勃起だ。硬くならなきゃオンナの中に入れられねぇだろ」

「オンナの中ってどこ」

「それはまた後で教えてやる。テメェにゃちっと早ェ」

「ぶー」

質量を増したといっても、ソコは可愛らしく皮を被っている。
その皮を伸ばすように撫でてやると、サンジから奇声が上がった。

「ふお!」

「オイコラ、もちっと色っぽい声でも出さねェか」

教育に色もクソもあったものではないが、どうせなら楽しみたいではないか。
俺は決して変態じゃねェ、と思いつつも、サンジの反応が気になって、顔を覗き込む。

「おおお!?」

「あ、どした、ゾロ」

「…イヤ」

覗いたその顔は。
イケナイものを見てしまった感じだ。
美少年愛好家が金髪碧眼を好む理由が分かった気がした。
目は潤み、肌は蒸気し、寄せられた眉は切なげ。
想像を絶するエロさだ。

「集中集中…」

ちょっと荒くなってしまった鼻息を押さえ込み、ゾロは目を逸らしつつ作業を再開する。
サンジの声は次第に高くなり、腰が揺れた。

「ん…あ、んん…」

「気持ちイイか?」

「わ…かんね…」

本人の言とは裏腹に、サンジの股間はかなり盛り上がっており、生意気にも透明な液がゾロの指を汚し始める。

「ほれ、見てみろ。これがガマン汁だな」

「ガマン?俺、我慢なんかしてねぇぞ」

「お前がしてなくとも、チンコがしてるんだ」

液の滑りを利用して撫で回すと、イヤらしい水音が響いた。

「おわ!…うわうわゾロ、ヤベェって」

「イキそうか」

「何、イクって…つーか、小便出そう」

「いいから出しちまえ」

「マジで小便だって、コレ!」

「テメェのお漏らしにゃ慣れてるから。いいから出せよ」

「何年前の話だよぅ…」

指のピッチを上げる。
チンコは嬉しそうに首を振り、先走り液を撒き散らす。

「ん、ん、ゾロゾロ!」

「オウ」

「出るって!マジ漏れるー!」



ぴゅ。



ソレは少量ではあるが、元気よく飛び出して。
ロロノア家の食卓を、見事に汚した。

「あうー…」

「出たなー出た出た」

「小便…?」

「セイエキ」

ぐったりと背を預けてくるサンジを片手で支えてやって、ゾロはティッシュに手を伸ばした。

「これを自分でやんだ。それがマス掻きだ。分かったか?」

「んー」

「気持ちいいだろ?オトコの生きてる醍醐味だ」

「あー」

「聞いてるか、お前」

「んんー」

手繰り寄せた箱からティッシュを抜き取り、サンジの股間と食卓を清める。

「なー、ゾロ」

されるがままのサンジが発言した時、ゾロは中腰でサンジ越しにテーブルを拭いていた。

「ケツに、何か当たってんだけど」

「あ?」

「お前、短刀でも持ってんの」

「ああ?」

そんなものは持っていない、と自分の股間を覗いて見れば。

「おおおおお!?」

「うわ!ビックリした」

これはイタズラじゃなく。キョーイクなのに。
ゾロは物の見事に、勃起していた。



サンジはマス掻き=ゾロにしてもらうこと、と刷り込みされてしまったようで。
味を占めた思春期入口の少年は、毎日のように「ぞーろー」と襲撃してくる。
後ろめたさも悪びれもなく、純粋に。
そんな彼の小さなオシリに、次第に眼が釘付けになっっていったことを。
一体誰が責められようか。

ロロノア・ゾロ、18歳。
強制猥褻で捕まる悪夢に、毎夜悩まされている。
彼の真っ当な人生設計は、嘲笑うように逃げてしまった。




アリガチ…?
盟友・キヨミズ様に捧げます。ラブv